toshimi watanabe tokyo no.1 soul set 90年にTOKYO No.1 SOUL SETとしてデビュー以来、様々なジャンルを取り込んだ既成概念に捕われない独創的なサウンドで、幅広い支持を集めている俊美氏。音楽はもちろん洋服のことや靴のことなど、さらには料理までにも強いこだわりを持つ。人と同じという事は避けているという独自性の持ち方や感性など、多岐に渡り活躍されている俊美氏の創造性の背景を語ってくれた。

Q. 今、一番楽しいことはなんですか?古着屋巡りかな。特にヨーロッパ古着を見に高円寺や下北沢へ足を運びつつ…

「アメカジは不変的なところが魅力です。良い物はずっと良くて、その変わらない美しさがいいですね。ただ最近はヨーロッパの古着は特に気になります。
軍モノもそうですし、トラディショナルな部分は残しつつどこか少しずつ変わっているのが好きですね。ある意味ユニフォーム的な要素にカジュアルさが加わるというか、70年代の物はこんな感じというのが時代背景と共にあるけど、その中から自分なりに”今っぽさ”を探すのが好きですね。」と、かなりの古着好きである事が伝わってきた。
「とはいえ、ギャルソンやアンダーカバー、マルジェラは毎シーズンチェックしますね。新しいモノは古いモノから生まれているという、原点ともいえるブランドだと思っています。僕の中では、ですけどね。笑」
「雑誌で見るというかドーバーストリートマーケットや伊勢丹などに行って直接目で見て肌で感じながら見ています。いわゆる世の中の”今っぽさ”を求めている訳ではなくて、自分の中にある基準と照らし合わせていますね。例えばドットが世の中的に流行したとしても自分の中ではベーシックなので全面ではなく少しだけ取り入れてみるとか。基本的に乗っかりたくないというのは強く思っています、常にね。」
と冒頭から物に対する見方と自分自身へのこだわりが強い、とても氏らしい話でインタビューがスタートした。

インタビュー写真1

Q. 贅沢な時間はどのような時ですか?自分と向き合える時間。それが僕は本を読む時。

TOKYO No.1 SOUL SETのギター、ヴォーカルを担当し、近年ではプロデュースワークもこなすという多岐に渡り多忙な日々を送っている中での、贅沢な時間が気になる。「ん~贅沢かぁ。」と前置きがあったがほぼ即答で「本を読む時間ですかね。」正直とても意外な返答で少し驚いたが、その後の話を聞き納得した。
「活字を読むと心が落ち着きますね。正直、内容がどうこうというより活字を読んでいる、本を読めている時間があるというのが、心に余裕があるんだなと実感出来てとても充実した贅沢な時間だと思っています。」
さらにこう続けてくれた。「本を読んでいると、作者の意向や伝えようとしている事を自問自答しますね。そうする事で自分と向き合う事が出来ている時間でもあります。主人公に自分を置き換えてみたりもします。自分だったらこうするなとかこう思うなとか。」自らを表現し、発信する側である俊美さんが何かを得ようとした時に有効な手段だという「自分だけの考えや経験だけだと小さくまとまってしまう気がするんですよね。色々な人の話を聞くのももちろん良いのですが、僕としては活字を読むという事で一番自分の中にインプットされます。それをするかしないかで人としての深みが大きく違ってくるとも思っています。」

インタビュー写真2

Q. 大切にしている思い入れのあるアイテムはありますか? また、それはどんなものでしょうか?渡辺俊美とは何なのか?を紹介出来るアイテムかな。

こだわりが強く、とはいえ新しいモノも取り入れる柔軟性があるので、多くの様々なアイテムを所有している。その中からどれを大切なモノかは甲乙付けがたいであろうと思いながらも、この質問を投げかけたところ
「いっぱいあるな~笑。靴はもちろんだし、洋服やハット、あとあれもか~。んー、いっぱいあります。笑」やはりすぐには決められない。それほどモノに対する愛情が溢れているんだなと感じた。
かなり悩んだ様子の後、「自分とは何なのか、渡辺俊美とは何なのか?を紹介する事が出来るアイテムがやっぱり大切なアイテムかな。好きなモノを挙げだしたらキリが無くなると思うんですよ。ただ、大切なモノとなるとキリがある。」
そこからはご自身の夢も踏まえ「レコードも大切なモノですね。引っ越しに困るくらいの枚数があります….。泣く泣く何千枚かは手放しましたけど、厳選した数千枚は残しています。」
厳選された基準は何ですか?と伺う前に「将来、深夜食堂をやった時にかけたいレコード。小さくてコの時型の店で、4人くらいでいっぱいのお店かな~。そこで料理を出しながら、このレコードはあんな時にこんな事があってねーとかお客さんと話しながらレコードに針を落とすんです。ジャケットについてもその時に色々話せる様なレコードはずっと残しています。」
モノについて語りながらも、そのモノが自身を紹介出来るという、ある意味相思相愛な関係を築いているのだと感じた。

インタビュー写真3

Q. 共に過ごしてきた思い入れのものはありますか?レコーディングや何か作品を残す時には欠かせない

「ソウルセットの時に使っているのは決まっていて、70年のストラトキャスター、66年テレキャスター、70年のES335。常に使っているのはグレッチ。そしてソロの時は何でも無いステッカーだらけのギターですね。」
ここは即答で、様々なシーンで使用するギターを、ほぼ一息で話してくれた。思い入れが強すぎるあまりなのか、音楽を生業としている人ならではなのか、という驚きのエピソードも「酔っぱらって人にあげちゃったりとか、LIVE中アドレナリンが出過ぎたのかステージから投げてしまったりとか。笑。」
そんなことってあるんですねと言おうとしたが、「でも、そういう感じなんだよね。」と笑って、一間おいてから、「デビュー当時から使っている70年のストラトキャスターやジョー・ストラマーが使っていた66年のストラトキャスター、必死になって探したギターはやっぱり思い入れが強いですね。」に続き、さらに真剣な表情でこう続けてくれた。
「レコーディングの時、何かを残す時はやっぱり思い入れのあるギターで臨みます。」20数年に渡り第一線で活躍されている氏ならではの内容を、堅くなりすぎ無い様に、冗談エピソードを交えながら真剣に真っ直ぐな表情で語ってくれた。
「音楽は自分が生きている事を実感させてくれる事。自分を表現出来る事でもあるし、LIVE中のお客さんとのキャッチボールとかは最高です。そして、心臓を打っている感じがするんだよね、ビートは。」

インタビュー写真4

Q. BILLY’Sでこのシューズを選ばれたのはなぜですか?表情や表現したい事が変えられる”Dr Martens”

個人的なイメージとは裏腹にかなりのスニーカーフリークであるという事が分かった。しかし、俊美さんというとパッと浮かぶのがやっぱりブーツにハット。
ドクターマーチンは、遡ると何足持っていたか分からないとの事。
「昔は、欲しくて欲しくお金を貯めて買っていました。この8ホールはもちろん持っています。紐の色を変えて表情を変える事で自己表現も出来ますし、意味が加わるというか、背景が見えてくる。そんなところも好きです。ギュッと紐をしめて履くのがカッコいいですね。買い直しもするし、ソール交換やリペアして履いています。」
やはり時代背景や意味合いをとても大切にしている事が伺える。「8ホールに合う靴下とかあると嬉しいよね。靴の丈は決まっていてそこから出る部分で自己表現が出来たらさらにいいよね。」と今の時代に合いそうなアドバイスを頂いた。
どういった合わせ方をするのかと気になり、サイドゴアのコーディネートのポイントを伺った。「バイカーなイメージが強いかな、サイドゴアを履く時は細身のパンツに合わせるのが多いです。時にはワークっぽいイメージにも落とし込めますよね。」
ドクターマーチンとはかなり付き合いが長く、「僕が10代の頃からあるプロダクトや、ベーシックな部分に今らしさが加わっているプロダクトもある。
そんな中でも今も変わらないプロダクトもあるのが魅力ですね。」
モノの知識や時代背景の知識など、とにかく詳しく色々な話を俊美氏らしい表現や話し方で聞かせてくれた。

Profile

渡辺俊美 / TOSHIMI WATANABE

TOKYO No.1 SOUL SET
TOKYO No.1 SOUL SETのヴォーカル、ギター、サウンド・プロダクション担当。独自のメロディとカラーを持つヴォーカルは各方面で定評があり、様々なアーティストの作品への参加、近年ではプロデュースワークもこなす。2010年1月20日には自身の音楽的好奇心を反映し試みるプロジェクト、THE ZOOT16のメジャーデビューアルバム『ヒズミカル』をリリース。
「猪苗代湖ズ」(渡辺俊美はBASS担当)として、2011年12月31日には第62回NHK紅白歌合戦に出場。
2012年1月14日~2月26日まで、渡辺俊美、初となる個展「ソバカス」(会場:勝どきbrf) を開催。2月8日には、THE ZOOT16初のベストアルバム「Z16」をリリース。そして、翌週2月15日には、過去4タイトルリリースした、ジャズ・コンピレーションCD「BRUSHING WORKS INTER PLAY」の、最新作にして、ベストセレクト盤「BRUSHING WORKS INTER PLAY My Favorite Swings」をリリース。さらに、6月13日には自身初となるソロ名義でのアルバム「としみはとしみ」をリリース。全国各地でソロライブ、イベントを開催している。
また、2014年春には自身のtwitter(https://twitter.com/zootset)で人気のお弁当を中心にまとめた書籍「461個の弁当は、親父と息子の男の約束。」をマガジンハウスより発売、発売初日からamazon男の料理部門でベストセラー1位を記録し47,000部を超える大ヒット。好評発売中。
URL : watanabetoshimi.com

インタビュー写真5

Photo:Akira Onozuka