MODEL YUSUKE OSHIBA 東京のストリートに身を置くこと20年近く。リアルな現場を常に体現し見てきた東京ストリート界最重要人物の一人。

新しいことを初めて、やり慣れていく過程が楽しい。

Q. 今、一番楽しいことはなんですか?

何にも染まってない印象を持つ、唯一無二な存在の大柴氏。ただ、インディペンデントでありながらメジャーな動きも自身の色を保ちつつ立ち振る舞う、まさに表現者というワードがこんなに当てはまる人はここ東京でも有数だと思う。20年以上に渡り東京のストリートを体現してきた氏が、今楽しいと思えることは?

「どんなジャンルにおいても、元々そこの畑にどっぷりいなかった、新しいことに挑戦していく姿勢と、それらを乗り越えて自分のものにしていく過程が楽しいですね。何かひとつのことでこれが楽しいというのは正直そんなになくて、自分の興味が向いたものをやってみようと思う瞬間は気持ちいいです。」
「スタジオに関しては、使う側の人間だったけど今は回す側というか使ってもらう側になってみて良いことも悪いことも色々ありますけど、自分が決めたことだし、興味があることなので、真っ直ぐにそこに対して向かって行く時が好きです。意外と人から提案をもらったりきっかけを与えてもらってチャレンジしたことが多いんですよ。その時は必ず、なんで僕に声かけてくれたんですか?から始まって、そこから相当話をつめますね。それで、やってみよう、やってみたいって思ったものに挑戦しています。モデルにしても原宿歩いてたら拾ってもらったという感覚です。実は洋服作りも人から提案をもらったのがきっかけですね。」

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自身の身の振り方ひとつに対しても、強いこだわりを持ち、ある時は柔軟に受け入れる姿勢を持っている。自分の感覚を信じ、そこがブレていないからこそ今も尚、活躍と進化が止まらず、圧倒的な存在感なんだなと感じた。

「自発的にやりたくてしょうがなくて始めたのは音楽とスケートボード。仕事じゃないというのが大きいですが、ライフワークという意味で。ただ、繋がってるのを感じますね。自分の人生において。スケートボードを通じて新しい発見や出会いをたくさん与えてもらっていますからね。それらを踏襲して並行させて来たのが、今の僕を形成している大きな部分というのは間違いないです。もちろんそこには家族だったり仲間だったりのサポートがあっての話ですけど。」

身を置く環境やその周囲のコトやモノ、ヒトに対するリスペクトは絶対なものを感じた。

「一見好きなことばっかりやっていて、自由奔放に出来てていいなって思われる生き方ですけど、いわゆる俗一般的な社会的信用だったり、俗一般的なあるべき社会的地位だったりをカナグリ捨てざる得なく、選んできたから意外に失ったものもありますよ。苦笑。ただ、自分で選んできたっていうだけだからそれを後悔してないだけなんですよね。」
「選んだ道の道中で、人生レベルでヤバイなって事が起こったとしても、身から出た錆の様な生き方を自分で選んでるっていうのが大前提にあるから、予期している困難じゃないですけど、こういう生き方するならこんな事も起こるよなって思いながら生きてます。」

穏やかながらとても力強く語ってくれた。

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お金にならないコトをやり続けられている時間。

Q. 贅沢な時間はどのような時ですか?

「今こうして自分の好きなスニーカー1足に対して語ることが出来る時間も贅沢ですよね。居酒屋でもないのに。笑。なおかつそれを配信して、共感してくれる人を募る事が出来てしまう。時間もそうだけど、そんな生き方って贅沢だなと思いますね。」

多彩な才能を発揮しながら表現し続け、多くの人を魅了してきた氏。それにより背負うものが他の人とは違く、重たいのは前途した通り。そんな生き方、もしくは過ごす時間も贅沢だと語ってくれた。

「音楽にしてもアルバム出して、メンバーのなにがしが潤う訳ではなくて、気持ちが潤うんですよね。ちょっとカッコつけた言い方になってしまうかもしれないけど、そんなお金にならないコトをやり続けられている事実と、それが出来ている時間は贅沢ですね。」

生業としているコトだけでも多岐に渡るが、そうじゃないことで多くのコトをやっている氏。そこに向き合う氏の姿勢を見ていると、気持ちがいいくらい真っ直ぐで純粋に楽しんでいるのでスゴくポジティブな気をもらえている気がする。

「自分がやってきた事や通ってきた道が間違っていなかったからこそ、周りの人がサポートをしてくれるようになって、出来ているんだな、俺は間違っていなかったんだなと、自負するようにしてます。」

こういうところもまた、格好いい。

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それでしか使えない工具というのが惹かれますね。

Q. 大切にしている思い入れのあるアイテムはありますか?
    また、それはどんなものでしょうか?

「大体の男って元々、鉄の塊って好きだと思うんですよ。工具しかり。プラス僕はそこに感情移入するのが趣味なんですよ。お前格好いいなって。笑。」

その格好いい理由は存在感とのこと。

「中学の時に買ったこのスケートレンチはいまだに持ってますね。もちろん、他にも買いましたけど。当時、実家の工具箱に入っていて俺以外誰も使わないんだろうなって思っていたんですよ。スケートボードを組むときや調整することだけしか出来ないんですよこのレンチは。とはいえスケートボードには必要不可欠で。何かそんな1つに偏った工具というか存在感、そこにめちゃくちゃ惚れちゃいましたね。」

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さらに感情移入されていく。

「ある分野では好かれることはあっても、こいつって嫌われること無いんですよ。というより嫌われる理由が見当たらない。使い方が分からない、使わないから嫌いって、理由としてはおかしいですよね?」

ここから、氏を形成している部分の一角を聞くことが出来た。

「なんか嫌だなって断られ方とか言い方ってすごく嫌いで、嫌なら嫌で理由をつけて欲しいんですよ。友達と遊んでても何か嫌だなって言い始める人いるんですけど、そういう人には帰れば?と進めます。お互い意味無いですからね。理由があれば、改善したり注意したりなどできますけど。」

さらにこんなエピソードまで

「晩飯を外で食べるときにうちの奥さんと子供は焼肉、俺はハンバーガーの主張をした時があって、もちろん家族との時間は大切にしたいからハンバーガーを進めたんですけど、奥さんが特に理由もなくハンバーガーは嫌だって感じだったので、焼肉の窓側に座ってもらって俺はその窓開けて外でハンバーガーを食ってた時がありましたね。最初は色々あったけど、今ではウチのスタンダードになっています。」

やっぱり人とは何か違うものを持っている方だなと改めて感じた。

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基本構造が全く変わらない文房具ですかね。

Q. 共に過ごしてきた思い入れのものはありますか?

こだわりが強い氏の持ち物が純粋に気になる。

「文房具が好きなんですよ、元々。その中でも遥か昔からあって、今も尚進化を続けている万年筆が好きですね。10年ほど前から使っています。仕事の中で意外と何かを書く作業というのが多くて、洋服の指示書だったり、唄の歌詞だったり、身一つでやってきたけど、そうじゃない場面での欠かせないアイテムですね。筆圧によっても線の細さとかインクの出方が変わってくる絶妙なバランス感もたまらなく好きですね。」

意外なアイテムで少し驚いた。氏のこだわりというか考えをこう続けてくれた。

「今よく使っている万年筆は極細、ペン先は付け替えられて唯一そこだけが消耗品で、細かい線を描くのに使っていますね。通常に文字だったりを書く時にはアメリカ製のスタンダードな中字のペン先を使っています。そんなに使い分けたりはしないけど、3本くらいは常にありますね。」「だってほら、絵を描いていてチラッとペン先見た時に万年筆のあの感じだと上がるでしょ。そういうの大事ですね、すごく。笑。絵を描いてる時に自分自身でモチベーションを上げないといけないんだけど、そういった意味でもいいですね。」

文房具屋に行き、全部書かせてもらってしまうほど気になる存在になってしまっているという。

「やっぱり高いのは高いなりに描きやすい。何万もするやつとか。個人的にわかったことが、1万円弱くらいの物が、自分次第でどうなるかっていうラインでした。いきなり高くて性能がいい物買っても面白くないでしょ、乗りこなすでしょ。っていう精神と意気込みで買ったのを憶えています。いわゆるスケーター魂ですね。そういった意味でいうと万年筆とスケボーって似てるんですよ。笑。」

最後に、

「クリエイションする上で愛機にしていくには、なんでもそうですけどホクロの数まで分かっていないとダメですよね?ってことだと思うんですよ。」

まさに氏らしい発想だけど、かなり納得できた。

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ローカルイズム全開でどこにも属していない存在の”PUMA SUEDE”

Q. BILLY’S でこのシューズを選ばれたのはなぜですか?

「僕の中ではスケートボードって、スポーツ、趣味、仕事、どのカテゴリーにも当てはまらないものなんですよね。表現が難しいですが、衣食住に近いところにスケートボードはあるかもしれません。それ程まで僕の中では他には無く唯一無二な存在ですね。あらゆるセンスはスケーターが宇宙一アンテナ張ってて、宇宙一オシャレだと思っている。これ多分5年後も同じこと言ってると思います。笑。」

やはり氏と”PUMA SUEDE”との接点はスケートボードだった。そして、こう続けてくれた。

「出会いは17歳で、変な話だけど、上野のアメ横でワゴンセールで売っているのを見つけたのがきっかけで、履くようになったんです。当時は週7日でスケートしていたから、財布にも優しいし実際スケートもしやすいし、という事でまさにこの紺のスウェードをダメにしては買って履いて、またダメにしてというのを、今でも繰り返していますね。」

とても意外な出会いですねと言ってしまった。

「当時はそれしか無くて正直特に有り難みも情もなかった。ただ、大人になって思い返すと、あの時これがアメ横に無かったら、コンスタントに新鮮な靴でスケートをやるのって相当難しかったなと。って考えると様様じゃないかなって思うんですよ。そこからは、意識するようになったし人との繋がりもあってさらに好きになっていくんですけどね。」
「大きいのは、ローカルイズム全開なブランドっていうところがやっぱり好きですね。ローカルな人にスケートボードを続けて欲しいっていう考えが強くて、メジャーじゃなくても、ローカルの人をフックアップしたりとかサポートしたりとかが、契約していたライダーの人選にも出ていてこういうブランとしての考え方があるから、あの人じゃなくてこの人だったんだ。とか、とにかくそこの根っこの部分にも惚れてますね。」

きっかけは小さいが、自分なりに咀嚼して表現してきたことで今に至っている。ある意味単純でシンプルだけど、氏のような考えを実行したり発想したりは難しいと感じた。本当に芯が太く強い人だなと改めてそのオーラを感じることができてすごく嬉しかった。


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Photo : Yozo Yoshino

Profile

大柴裕介 / Yusuke Oshiba

モデルとして活動しつつ、東京下町に撮影スタジオdebolbeを設立、運営する。6月には自身のバンド「CROCODILE COX&D」の新曲をレコーディング予定。BE NATURAL所属。
Official Site > http://debolbe.com/ BE NATURAL > http://www.bnm-jp.com/