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2000年代のランニングシューズが現代のファッションシーンで注目を集めるなか、〈アシックス〉が満を持してリリースする「GEL-CUMULUS 16」。2014年に誕生したこのモデルを、なぜ、このタイミングで復活させることになったのか。8月某日「ビリーズ」のプレス・島田卓矢が向かったのは、神戸にあるアシックススポーツ工学研究所。デザイナーと開発担当者に、本作の魅力と制作秘話を聞いた。
写真左から「ビリーズ」のプレス・島田卓矢、〈アシックス〉スポーツスタイルでデザイナーを務める浜名徳子さん、開発担当の山室典子さん。中央に映るのが、今回リリースとなる3色の「GEL-CUMULUS 16」。
まずはじめに、本日お邪魔させてもらっているアシックススポーツ工学研究所が、どんな場所なのか教えてください。
アシックススポーツ工学研究所は、「Human-centric science」にこだわり、人間の運動動作に着目・分析し、独自に開発した素材や構造設計技術を用いることによって、スポーツを通じた人々の可能性を最大限に引き出すイノベーティブな技術、製品の研究に取り組んでいます。
おふたりはこちらの研究所に頻繁に来られるんですか?
アーカイブ室にはかなり行きますね。今回の「GEL-CUMULUS 16」もですけど、なにかを生み出すとき、インスピレーションをたくさんもらっています。
私は機能評価や物性試験をするときに、お世話になってます。自分が開発担当しているシューズが、しっかりと機能しているか、品質に問題がないかどうか計測してもらっているんです。
おふたりはデザイナーと開発という職種ですが、具体的なお仕事内容を教えていただけますか?
デザイナーというと靴の絵を書いているだけという印象があると思いますが、それだけでなく、商品企画の延長として、デザインコンセプト作り・ストーリー創出するところから、開発や設計と一緒に図面をつくったり、サンプルを確認して修正を加えたりと、幅広い工程に関わっています。
私は、浜名さんをはじめ、デザイナーからいただいたデザインを靴にしていく業務です。靴に使われる材料や指示内容をまとめて工場に提出したり、上がってきたサンプルの履き心地や足入れをチェックしたりもします。
年間で、どれくらいの足数を作られるんですか?
一概には言えないですし、その年にもよるんですが、少なくとも10足以上は担当しています。その中には、ひとつのアイテムを複数人でアイデアを持ち寄ったりすることもありますし、数シーズンかけてデザインするものもありますね。
私の場合は、1年で15~20品番ぐらいのアイテムを開発しています。サンプルは1品番あたり大体2~3回ほど作るので、総数にするとかなりの足数を作っていることになりますね。
そもそも、〈アシックス〉が新商品を開発するとなったときは、どういった流れなんでしょう?
まず最初に、アメリカのボストンにいるプロダクトマネジメントのメンバーから商品の方向性を提示してもらいます。そこから、どんなお客様に向けて、どのような付加価値を持たせるかなど、デザインに必要な情報を議論しながら、クリエーションを行っています。
開発もプロダクトマネジメントやデザインと一緒に議論をしながら、機能や構造のアドバイスを行っています。最終的にデザインが決まったら、サンプリングを進めていきます。
それでは「GEL-CUMULUS 16」の話を早速していきたいのですが、オリジナルはいつ発売されたのでしょうか?
2025年25AWシーズンに発売となる「GEL-CUMULUS 16」。
オリジナルは2014年に発売されていて、元はランニングシューズとして誕生してます。
そこから時を経て、なぜいま「GEL-CUMULUS 16」が復刻されることになったんでしょう?
私たちはこれまで、2000年代のランニングシルエットを現代に提案し続けることで、新たなスタイルをリードしてきたと自負しています。「GEL-CUMULUS 16」も、その流れの次の一手として、女性顧客視点でのスタイリングを意識し、何度も会議を重ねて復刻することになりました。
とくに今、ファッションの流れの中で、ジェンダーレスのアプローチはとても重要なところだなと考えています。その視点を大切にしながら、スタイリングに取り入れやすいモデルを今回選んだんですよね。
近年、私たちは、2000年代初期から、2010年代へと軸足を移しながら、懐かしさと未来感のバランスの取れたシルエットを提案しています。今回のモデルも、2010年代前半のランニングシューズをベースに、よりレトロフューチャーな雰囲気を強めてデザインされているんです。
最近の〈アシックス〉のシューズは、たしかにそのコンセプトを強く感じますよね。
それと、このモデルが選ばれたのは、見た目だけではないんです。クッション性がいいことと、程よい安定感を兼ね備えた二層構造のミッドソールだったり、当時の〈アシックス〉のテクノロジーを象徴する1足でもあるので。今回のアップデートでは、細かなディテールを見直すことで、現代のライフスタイルによりフィットする、アクティブライフスタイルシューズとして進化させています。
もっと詳しく掘り下げると、〈アシックス〉のランニングカテゴリーは大きく「スタビリティ系モデル」と「クッション系モデル」のふたつに分かれています。 スタビリティ系モデルの代表的なアイテムには、GEL-KAYANOシリーズやGT-2000シリーズなどがありますが、これらのシリーズは、2000年代の復刻アイテムとして「GEL-KAYANO 14」や「GT-2160」を発売してきました。一方、クッション系モデルの復刻はあまり行われていなかったため、2010年代のアイテムの中でも価格・機能・デザインのバランスに優れた「GEL-CUMULUS 16」を復刻することになったんです。
「GEL-CUMULUS 16」のオリジナルが発売となった2014年というのは、その前後で、デザインや技術面でも、過渡期だったと記憶しています。
おっしゃる通りで、わかりやすいところで言うなら、それまではステッチダウンの仕様が多く使われていた時代なんですね。そこから、2010年代に入ると、技術も進歩して、熱圧着でパーツを構成するステッチレスなデザインが増えていきました。2014年は、ちょうどどちらも混ざっている時期なんです。
復刻版とオリジナルとの違いは、どういった点にあるのでしょうか?
大きなところでいうと、アッパーの甲の部分。当時は片方にしか補強がありませんでしたが、今作はどちらにも補強を入れています。
片方ってどうしてもアンバランスになったりとか、尖ったイメージが出てしまうという意見がありまして。両側に補強を付けたことで、オリジナルよりも歩行時の安定性を持たせるようにしていますし、シンメトリーのデザインになったことで、色々な方に履いてもらいやすい商品になっていると思います。材料に関しても、ライフスタイルシーンに合わせてヒールのメッシュを変更しています。
材料ってすごく大事だと思うんですよね。これまでも、たくさんビンテージテックの復刻を担当させていただいたんですけど、カラーはもちろん、使う材料によってもまったく表情が変わってくるんです。なかでも「GEL-CUMULUS 16」は、抜け感もほどよくて、色や材料が変わるだけで、どんな表情にも変化してくれるモデルだと思います。
機能面での変更はあるんでしょうか?
「GEL-CUMULUS 16」は元々ランニングの機能がたくさん盛り込まれているシューズなので、なるべくオリジナルに忠実になるよう作りました。ただし、当時よりも足入れや快適性を高めるために、細部の材料の見直しや形状変更を行っています。
材料の話になるんですけど〈アシックス〉としても、将来を見据えてリサイクルに力を入れているところです。当時はもちろんリサイクルではなかったんですけども、本作のほとんどは、リサイクルPETを使った材料になっています。
今回発売となる「GEL-CUMULUS 16」の3カラー。
カラーリングも特徴的だなと思いました。この配色などは、浜名さんが決められているんでしょうか?
実は〈アシックス〉には、日本、アメリカ、ヨーロッパの3拠点にカラーリストがいるんです。カラーリストが各拠点から情報やトレンドを集めてシーズンのパレットをつくり、商品に合わせて配色をしています。決定にあたっては他部門とも深く議論し、戦略的に決めています。今回のカラーも、ローンチにふさわしくトレンドを強く意識した配色です。
最近は、〈アシックス〉のスニーカーのなかでも、アーカイブモデルを履いている人を、本当によく見かけます。さまざまな要因があると思いますが、おふたりはなぜだと思いますか?
私たちのシューズは、スポーツ工学研究所で、徹底的に試験した上で、品質や履き心地、デザイン面も妥協せず作られています。その信頼感がひとつあるんじゃないかなと思ってます。あと、時代とともに改良を重ねてきた結果、いまは多くのラインナップがあります。どんなお客様の好みにもフィットするものがあることも、大きな要因じゃないかなと思いますね。
私たち「スポーツスタイル」から出させていただいているビンテージテックモデルは、若い人には目新しく、新鮮に感じていただけると思っています。それだけではなくて、見せ方だったりカラーリング、あとはコラボレーションというところで、現代のトレンドに合わせたアレンジを加えることで注目されていると感じています。なにより、履いてわかる確かなフィット感だったり、コンフォートさっていうところは私たちの1番大事にしているところですし、今まで培われてきた大事な〈アシックス〉の財産。そこが評価されているっていう面もあると思います。
ありがとうございます。たしかに、浜名さんの言う通り、若い子たちにはちょうど目新しく映ってるのは感じます。2010年代ってぼくらには最近に感じてしまうけど、20代前半の子たちにとっては、ファッションにも興味がなかっただろうし、手が届かなかった金額感でもあったと思うし。
逆に質問させてください。島田さんから見て、〈アシックス〉の強みはどんなところだと思いますか?
ブランドが培ってきた安心感と信頼感というのはやっぱり素敵だなと思っていて。それは日本、海外問わず、そのイメージを持っている人は多いと感じます。それと、過去のものを復刻することはよくありますけど、その当時にいいものを作っていないと、復刻とはならない。その点、〈アシックス〉は途切れることなく、何十年もエポックになるような靴を出し続けています。これから10年、20年経ったとしても、10年、20年前の素晴らしいシューズがある。復刻のネタはつきないですよね(笑)。
そう思っていただけて、なによりです。
その歴史を紡いでいけるよう、私たちも引き続き、発信し続けていこうと思います。
では最後に、「GEL-CUMULUS 16」をどんな人たちに履いて欲しいですか?
ジェンダー問わず幅広い方に、日常のスタイルとして取り入れていただきたいなと思っています。私はアパレル経験者ということもあり、頭の先から足の先まで、コーディネートを楽しんでくれる方々に是非取り入れていただけたらうれしいですね。その人を輝かせるきっかけになるようなシューズになってくれればと思います。
すでに「アシックス スポーツスタイル」を愛用してくださっている方はもちろん、 これまで履いたことのない方にも、この新しいデザインをきっかけに魅力や快適さを体感していただきたいです。 そして、よりアクティブなライフスタイルをサポートできればと思っています。
2014年にランニングシューズとして誕生し、2025年に、現代のライフスタイルシューズとして新たな命を吹き込まれた「GEL-CUMULUS 16」。
Photo/Hiroyuki Takenouchi
Video/Ryo Iwaki
Text/Keisuke Kimura