hue deluxe designer 2003年よりdeluxeを展開する東京を
  代表する気鋭デザイナー。N.Y.へ渡り、影響を受けたアメリカンカルチャーを自身の想いと重ね合わせ、“ストリートテイラー”をコンセプトに掲げた物作りで東京のアパレルシーンを牽引するhue氏。氏のルーツでもあるアメリカンカルチャーの事や洋服の事を語ってくれた。

Q. 今、一番楽しいことはなんですか? 何事もポジティブに捉え、楽しんでしまうのが僕のマインドです。

洋服を通じて自身を表現し続け、それに周囲が反応して、さらに期待する。その期待をシーズン毎に超え続け、絶大な支持を得ているHUE氏の楽しい事とは?漠然としたシンプルな質問に真摯に答えてくれた。
「何でも楽しんでいます。笑。仕事もそうですし、家族や仲間と過ごす時間も、もちろん楽しいです。基本的にポジティブに物事を捉えるのが僕のマインドなので。正直、若い時はめんどくさいなと思う事もあったけど今ではそれすらも楽しめる様になりました。仕事が忙しくて、でも家庭の事もやらないといけない。そんな時でもそれをクリアする過程だったり、クリアした時に楽しみを感じる様になりました。」
仕事と私生活の両立。多忙な中でのそれは非常に難しい事だと思った。話を聞いていて、双方が双方の糧になっている気がした。おそらく、どちらかを疎かにしてしまうと、どっちも疎かになってしまうのだろうなと。もちろん仕事の上でも楽しみ方はあると語ってくれた。
「煮詰めた企画や、インスピレーションが降りて来た瞬間とか、それを生産の人間とディスカッションして形になって来た時や、ToDoリストにタスクを書き出してそれを全てクリアした時とか。」
「昔は、それこそ映画を見た時だったり好きなものを買ってる時とか、趣味の事をやってる時とか、なんかコレっていうのがあった気がするけど、年齢を重ねるにつれて、ある意味自分の中だけでカテゴライズされた事に対して楽しみを見いだせる様になりました。」

インタビュー写真1

Q. 贅沢な時間はどのような時ですか?合間を縫って、自分で作った時間。

年に数回海外を行き来している氏。仕事はもちろん旅行にも行く事も多い。多忙を極める氏の時間への概念を聞けて嬉しかった。
「贅沢な時間もたくさんあります。海外旅行で良いホテルに泊まって遊んでいる時間も贅沢といえば贅沢ですし。考え方次第だと思うんですけど、お金で買うのも良いとは思います。ただ、やっぱり僕は日常の忙しい中であえて作った時間が最高の贅沢な時間だと思います。」
「無理だと思っても、時間を作って人と逢ったりどこかに行ったり、あえて作った時間で本とか読んでゆっくりすごす時間が好きです。」
この企画を始めて気づいた事、それは多忙を極める人の贅沢な時間が皆さん共通している部分があるなと。当初はすごく異次元な体験談などを待ち構えていたけど、全くの逆。まさにそのような温かいエピソードも
「休日に家族でご飯を食べる時も、いつもなら遅い時間から始まるんだけど、少し早い時間から食べ始めてゆっくり家族とすごす時間はこれ以上ない贅沢な時です。」
「でも飛行機に乗ってる時間も好きです。変な意味じゃなく、何も出来ないじゃないですか。電話も繋がらないし、自分がどうするかなので、本読んだり、映画見たり、時間を持て余すって贅沢です。」

普通の事を、良い意味で普通として捉えないクリエイターの感覚が伝わってきた。

インタビュー写真2

Q. 大切にしている思い入れのあるアイテムはありますか? 次のステージに上がれた実感をくれたアイテムです。

昔からアメリカンカルチャーに憧れ、当時から映画や洋書をチェックしていたという。そこにはコンバースやバンズを履いたイケてる大人がたくさん描写され、憧れは強くなっていくばかりだった時期を経て、自身でバンズがクリエイティブ出来る喜びはとても大きかったと語ってくれた。
「バンズは小学生の頃から履いていました。当時からアメリカンカルチャーが大好きで、今の様にインターネットが全くない時代だったので、映画や洋書をひたすら見ていました。その中でバンズを知ってから今までバンズはずっと僕のワードローブにあります。」
「2006年秋冬のコレクションでバンズと初めて共同作業出来たのがこの靴です。ずっと憧れていたブランドと一緒に出来るという事が次のステージに上がれた気がして自分の中でスゴく嬉しかったのを今でも憶えています。初めてすぎて何から手を付けたらいいか分からない中で、色々試行錯誤して出来た靴なので思い入れはとても強いです。初めてでいきなり茶色っていうのも今考えるとスゴいですよね。苦笑。」
その靴は8年程経った今でもとても綺麗な状態でそこにあった。氏の思い入れの強さをとても感じると共に、氏の今を形成する背景を感じられた。アメリカンカルチャーへの想いをもっと聞きたくなり質問を重ねた。

インタビュー写真3

Q. 共に過ごしてきた思い入れのものはありますか? 歳を重ねてもずっと穿き続けるものですかね。デニムは。

「クリエイションを生み出すものでは無くてごめんなさいね。。苦笑。
ただ、僕の仕事の上では欠かせないアイテムがやっぱりデニムなんですよ。昔からLevisの501xxとかLeeの101とかは当たり前の様に穿いていました。」

「昔は生デニムから穿いて色落ちさせてというのが楽しみとしてありましたが、加工してどれだけいい状態の物を作れるかが今は好きです。」
「国内産のデニムのクオリティは世界でもレベルが高いですからね。」
デニムや洋服をクリエイションする時にいったい何処からインスパイアされているのかが気になった。
「コレクションを見に行かせてもらったり、洋服以外のアートからも得るものは多いので美術館に行ったり、とにかく常にアンテナを張っています。何かインスピレーションを受けたらすぐメモしたりPCに落とし込みます。」
「シーズン毎に、その起点は違ったりします。テーマからやキーアイテム、時には色から始まる時もあります。」
デニムの魅力って何ですかね?という愚直な質問をしてしまったが、率直にこう返答してくれた。
「アメリカっぽいところです。」
「若い時は西海岸の方が好きでした、スケートカルチャーやバイクカルチャーにも憧れましたね。けど今はニューヨークに思い入れが強いです。20代半ばに住んでいたという事もあるのですが、色々な人種の人達がミックスされてる感じが好きです。東京には無い都会感というか雑多な感じがたまらないですね。利便性も高いですし。美術館に行ったりして、得るものは今でも多くあります。」
根底にはそこのカルチャーがあり、氏のクリエイションする物にはその気持ちが詰まっているんだなと感じた。

インタビュー写真4

Q. BILLY’Sでこのシューズを選ばれたのはなぜですか? 真っ白は真っ白でこの“AUTHENTIC”は履きたいですね。

「バンズといえばラットスタイルがカッコ良くてやっぱりハマると思います。でも僕は逆で、よりキレイに履きたいんですよね。1シーズン履いて、次のシーズンには新しいのを買っています。AUTHENTICに関しては、ほぼ全色揃えています。」
「ERAも好きですが、AUTHENTICの革靴を思わす感じが好きなんです。古いものが好きというのが根底にあるので、ERAの方がクッション性が優れているのを分かっていながらも、革靴らしいAUTHENTICが好きです。」

とても氏らしい感性で、チョイスしてくれたんだなと感じた。新しい解釈の仕方というか、物の見方を垣間みて強く刺激を受けた。
さらにこう続けてくれた。
「マニアックかもしれませんが、オールレザーにした場合、税関を通る時にERAはスポーツシューズで通るんですが、AUTHENTICは、革靴で通るんですよ。僕はひねくれてるので、そういうところも好きなんですよね。笑。」
取材を通じ、氏ならではの視点や感性が多く感じられた。
その視点と感性だからこそ、魅力的なアイテムが生み出され続けているのだなと強く感じた。


CHOICE ITEM : VANS AUTHENTIC VN-0EE3W00

Profile

HUE (DELUXE DESIGNER)

20代で渡米し、帰国後の2003年に《デラックス》をスタート。
“ストリートテイラー”をコンセプトに掲げ、自身が影響を受けたアメリカンカジュアルなどベースに、より上品に昇華した新たなカジュアル観で東京シーンを牽引する。

インタビュー写真5

Photo: Akira Onozuka