東京のストリートシーンで知らない人はいないであろう。むしろ世界中で東京のことが好きな人で知らない人はいないであろう井上三太氏。漫画家として、ブランドの経営者として、長きにわたりこのシーンのど真ん中にいる氏。あの世界観を生み出せる方の今感じていることや、スニーカーのシーンについてが非常に気になる。飾らずおそらくいつものままで真剣に語ってくれた。

Favorite of TOKYO 東京の3つの好きなところとその理由

漫画家として長きに渡り第一線でご活躍されている井上氏。
世界的な人気を誇る東京を舞台とした漫画「TOKYO TRIBE」で多くの読者を魅了し続けている。そんな氏に東京について改めて伺った。

①美味しい居酒屋が多いところ

井上氏「渋谷に長く住んでいて、今は世田谷に引っ越してきたんですよ。どちらの街もそうですけど、美味しい居酒屋が本当に多いですよね。」

佐藤「そうですよね。お気に入りのお店はどこですか?」

井上氏「正直、具体名はあんまり教えたくないです。。すみません。。」

佐藤「全然大丈夫です。確かに紹介してしまうと入れなくなったりしますもんね。世田谷はどうですか?」

井上氏「とても住みやすいですね。渋谷も良かったんですけど、バイブスが合わなくなってきまして、、これからは世田谷在住というのを打ち出していこうと色々考えています。ビースティボーイズもNYからLAに引っ越してからバスケのコートを作ったり、それに併設したスタジオを作ったりしていたのでそこからインスパイアを受けて、色々やっていきたいです。」

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②CYBER JAPAN DANCERS

佐藤「僕も注目しています。」

井上氏「可愛い女の子が多いですよね。」

③池の上

井上氏「通勤途中で毎日通過している街です。今気になっている街です。」

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PROUD of TOKYO クリエイションする上での楽しみ

佐藤「TOKYO TRIBEをはじめ僕もずっと好きなんですけど、あの世界観とか絵のタッチとか色使いとか、色々な魅力が詰まった作品を作り続けていく上で、楽しみとかありますか?」

井上氏「ありがとうございます。最近好きな言葉が、”才能というものは存在しなくて、好きか嫌いかだけ” という言葉でネットからの受け売りですが、継続は力なりっていう言葉と意味が近いんですけど。」

佐藤「とても興味深いですね。」

井上氏「スニーカーにしても音楽のジャンルにしても、ずっと一つのものが好きっていう人って多くないと思うんです。何に対しても好きの度合いが少なってきている気がしてて。というのも、好き度って鍛えられない事だと思うので。興味だったり、欲だったりの集合体が総じて好きという事になるじゃないですか。ただ、その中で何かをずっと好きで、ずっと向き合っている人が強いのかなって感じています。」

佐藤「たしかに、昔夢中になっていたものが今ではそこまでの熱量を持って考えてないですね。昔は考えることすらしなくて好きならそのまま向かってましたね。」

井上氏「好きという感情から、向上心も生まれてきます。僕も漫画を描いている中で目指す場所に近づきたいと思っています。もっと絵が上手くなりたいし、今は描けないけど描きたい絵はありますし。正直イライラします。だけど、そういう感情が生まれないということは壁に当たってないんだなとも思うので、重要な感情かなと、向上心がなくなったらそこで終わりかなって。」

佐藤「素晴らしいと思います。さすがです。」

井上氏「楽しみの話でしたよね。。すみません。。苦笑。」

佐藤「いえいえ大丈夫ですよ。」

井上氏「楽しみって正直難しいんですけど、成長の過程を楽しむことですかね。」

佐藤「井上さんでもまだ成長を意識されているんですね。勉強になります。」

井上氏「楽しみとは違ってしまいますけど、反響は気になりますね。人によっては、第三者の評価は気にしないという人もいますけど僕は、作品で楽しんでもらえているかが気になります。楽しんでもらったり、少しでも評価をしてもらえると必要とされている実感が湧いてきて、モチベーションになります。自己肯定にもつながりとても良いバイブスで取り組めるんです。」

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Feeling to CREATION ファッションのこだわり

東京のストリートシーンには欠かせない最重要人物の一人としてそのシーンを牽引し続け、その人気は国内に留まらず世界中の多くのファンを魅了している。そんな氏のファッションへのこだわりとは?

佐藤「SANTASTIC!を12年もやられている中で色々なファッションの流れを見てきていると思いますが、井上さんご自身のライフスタイルの中でのファッションのこだわりはどこにありますか?」

井上氏「年相応という事は意識していますね。例えばキャップって年々似合わなくなってるなっていうのが寂しくもあり、必然なのかなって思ったり。」

佐藤「とても似合っていますよ。井上さんのスタイルというか、確立されていますよね。」

井上氏「みんなが着ない色だったり、みんながしないような着こなしに挑戦したいと思う時もありますけど、結果ベーシックなスタイルが多いですね。たまにはカラフルなパンツとかも穿いてやろうかと思う時もありますしね。」

佐藤「見てみたいです!SANTASTIC!では洋服作りのどのようなところを意識されて行ってきているのですか?」

井上氏「根本にあるのは、例えばディズニーランドで買ったTシャツをあくる日そのまま原宿とかで着れちゃうんですよ。アメコミのキャラクターのTシャツだったりも同じですね。逆に日本のアニメのキャラクターのTシャツってファッションというカテゴリーに 中々入りづらいと思っていて。そこへの意識だったり、見せ方であったり。もちろん望む望まないが先にあると思いますけど。」

佐藤「たしかに、そうですね。僕もミッキーマウスのTシャツとか持っていますけど、日本のアニメのTシャツは持っていないし、街では着られないかもですね。そんな中SANTASTIC!を始められたきっかけみたいなのってどう行った事ですかね?」

井上氏「裏原宿のあのカルチャーは正に革命だと思っていて。服飾の専門学校に行ってなくても、洋服を作れてしまってあれだけのシーンを気づいてしまいましたからね。NIGOさんとかスケシンくんとかが自分の好きなものからインスパイアされたグラフィックをTシャツにして、とても人気が出てっていうのを近くで見てて、俺は漫画家でキャラクターもいるしTシャツとか ブランドにして見たいなって思って始めたのがきっかけではあります。」

佐藤「あのシーンのど真ん中にいらっしゃったんですね。井上さんは、やっぱり日本のアニメという中ではファッションシーンへ昇華させた先駆者でもありますね。フィギュアも持っています。」

井上氏「ありがとうございます。」

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Pleasure of CREATION スニーカーファッションについて

クラシックなモデルからハイテクなモデル、今やそれらをハイブリッドさせたスニーカーも登場しているスニーカーシーンを漫画家という側面とウェアブランドを経営されている両方の側面から俯瞰で見ている氏。ご自身のスニーカーファッションの捉え方や考え方はとてもシンプルで奥が深い事だった。

佐藤「井上さんといえば。というスニーカーがいくつか浮かびますが、シーンによっても変えたりしますか?」

井上氏「気分やシーンによって変えたりしますけど、クラシックなモデルが好きですね。日本にHIPHOPが入ってきて、藤原ヒロシさんとか高木完さんがアディダスのスーパースターを履いていて、とてもカッコよかったのを覚えています。やっぱりRUNDMCだし、アメリカのHIPHOPのスター達がスニーカーをカッコよく履いていましたからね。その印象が今でも強く残っています。」

佐藤「今のスニーカーとかも履きますか?」

井上氏「履きますよ。ただ、さっきの話じゃないですけど、ここも年相応には気をつけています。今の自分が似合うスニーカーを履きたいですね。」

佐藤「年相応は重要かもしれないですね。とても気になるのですが今のお気に入りのスニーカーははなんですか?」

井上氏「エア・フォース1です。フォーマルでいたいという気持ちもどこかにあって。何にでもスマートに合わせやすいじゃないですか、シャツを着るときも、カジュアルにTシャツを着たいときも。ハイテクなスニーカーも好きですけど、そこは若者の特権があってやっぱり今のスタイルに似合うんですね。」

佐藤「エア・フォース1いいですよね。ずっと変わらないマスターピース的な存在ですよね。スーパースターもそうですけど、どのスニーカーもやっぱ連想される人たちっていますよね。」

井上氏「ですね。BEASTIE BOYSのCHECK YOUR HEADというアルバムジャケットで3人が履いているのもアディダスのスーパースターで。あのアーティストはあのスニーカー履いてたとか、たくさんありますね。なんか僕はスニーカーにその人の考えていることなどの思想が出てるって思っているんですよ。例えば、渋谷系とか原宿系のミュージシャンが好きだったら、それっぽい格好にあうスニーカーだし。」

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Choise adidas“SUPERSTAR BOOST”

井上氏「まずデザインがシンプルなところがいいですよね。クラシックなHIPHOPが好きなので、その魅力に近しいものを感じます。この3本ラインは。しかも今の機能を搭載してるっていうハイブリッド感も、唆りますね。

佐藤「イメージ通りのお話が聞けて嬉しいです。僕としては、元々の背景もしっかり若い世代の人たちにも伝えていきたいですね。」

井上氏「そうですね。この前youtubeを見ていたらSUPREMEに並んでいる人がアップしていて、海外のですけど。その人はSUPREMEをほぼ知らないんですよ。ある種、そういう人たちで成り立っている部分はあると思いますけど少し寂しいですよね。元ネタまで勉強する意欲も無さそうだし。何でもいいとまでは言わないですけど、それを着ていればオシャレというか、安心というか。そこまでのブランドがまずスゴイですけど。僕は自分の価値観でセレクトしていきたいですね。もちろん流行も意識はしますけど。」

佐藤「分かっていて、本当に好きで着ている人ってどれくらいいるんだろうって勝手に考えちゃうことありますね。」

井上氏「転売目的というのもカッコよくないですよね。」

佐藤「そうですね。本質がブレてしまっている気がしています。ファッションの楽しみ方というか、何のためのファッションなのかという。」

井上氏「ですね。そう思うとこのスニーカーはしっかり本質があって、それを分かった上でセレクトして、履いているのがとてもカッコいいと思います。」

佐藤「とても良いお話が聞けました。ありがとうございます。」

貴重なお話の中、時折ジョークを交えながらのインタビューの時間。振り返るとすごく良い空気を作って頂けていた事に、氏の懐の深さとユーモア溢れるあの表現ができる方だからこそ、あの作品達が生まれるのだなと改めて感じた。

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Interviewer : BILLY'S ENT PR 佐藤
Photo : Akira Onozuka
Writer : Yusuke Kigawa (ALLTHUMBS inc.)