ビリーズ トウキョウ 中島歩 みちくさ連載

中島歩連載 第一回「僕と、映画。」前編

中島歩
みちくさ

BILLY’Sが 今、気になる人の“カルチャー”にフォーカスを当てて、
魅力を深掘りしていく連載企画。

第一弾は、俳優・中島歩にフィーチャー。
全十回にわたって、“みちくさ”をするように、気持ちの赴くままに
自身を形成してきたカルチャーについて語ってゆく。

役者人生のターニングポイントについて。

 役者人生でターニングポイントはいくつかあって、一つは舞台「黒蜥蜴」。初めてオーディションで勝ちとった大舞台で、出演をきっかけに今の事務所にも入りました。翌年には朝ドラの「花子とアン」の出演も決まって、「よし!これからどんどん売れていくぞ!」と張り切っていたのですが、当時の実力ではそんなにうまくいく訳もなく‥‥‥。その挫折経験もひとつのターニングポイントだったように思います。

 そこから30代前半までは、舞台が中心の生活。あるとき、事務所が主催するワークショップで大学の先輩である映画監督の冨永昌敬さんと知り合い、テレビ東京の深夜ドラマ「ひとりキャンプで食って寝る」という作品に面白い役で呼んでくださったんです。それまでは「とにかく言われたとおりに演じないと」と思っていたのですが、僕のキャラクターを生かした役柄でのびのびと演じることができて、現場がすごく楽しかったことを覚えています。やりたい演技が形になるようになってきて、これでいいのかもという実感がありました。

 濱口竜介監督の『偶然と想像』という作品に参加させていただいたことから仕事の幅が広がっていき、もう一度テレビに挑戦したいと参加したのが、「不適切にもほどがある!」というドラマでした。じつは僕、10代の頃に観た宮藤官九郎さんの「木更津キャッツアイ」にすごく影響を受けているんです。主演の5人はもちろん、阿部サダヲさんや古田新太さんといった役者さんたちがとにかくかっこよくて、面白い。そんな憧れだった方たちと仕事をする未来なんて当時は全然想像していなかったし、感慨深いです。

ジム・キャリーから受けた衝撃。

 映画に触れるようになったのは、子供のころから。週末は家族でレンタルショップに行っては、VHSを借りて好きな映画を観るというのが恒例でした。親が選んでいる横で僕はゴジラとか。人生で俳優という職業を認識したのは、ジム・キャリーだったと思います。とくに『マスク』は何度も繰り返し観ました。人を笑わせることが好きな子供だったので、原体験として「大人もこんなにふざけていいんだ」といった記憶が残っています。

中島歩
Photography / Yuto Kudo
Stylist / Kentaro Ueno
Hair & Make up / Takeharu Kobayashi
Edit & Text / Mikiko Ichitani
中島歩

 最近観たのは、ポール・トーマス・アンダーソンの最新作『ワンバトル・アフター・アナザー』。俳優のおじさんたちがみんなチャーミングで素晴らしかった。みんな可愛くて、とにかく俳優に萌える映画でした。監督とキャストが自由に映画を作っている感じも良かったし、映画館が笑い声に溢れていてとても楽しい映画体験でした。ちなみに、僕は映画館に毎日のように通っていたころ、自称 “笑い屋” として、そういった空気作りを勝手に担っていました。周りの人は迷惑だったかもしれないけれど(笑)。

中島 歩(なかじま あゆむ)

1988年10月7日生まれ、宮城県出身。2013年に美輪明宏主演舞台「黒蜥蜴」で俳優デビュー。NHK朝ドラ「花子とアン」(2014)、「あんぱん」(2025)、映画『いとみち』(2021)、『偶然と想像』(2021)などに出演。2026年にはテレビ東京「俺たちバッドバーバーズ」で初主演、NHK大河『豊臣兄弟!』にも出演予定。

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BILLY' S PRESENTS “Re;PROJECT” VOL.4 - RE;POST-

2025.11.29sat - 12.14sun BILLY' S ENT SHIBUYA

2025 年 11 月 29 日 ( 土 ) から 12 月 14 日 ( 日 ) まで、BILLY' S ENT 渋谷店にて、日本のポップカルチャーを象徴する “アニメ” を中心とした、邦画の海外版ポスター にフォーカスしたコンセプトイベント「BILLY' S PRESENTS “Re;PROJECT” VOL.4 - RE;POST -」を開催中。
ポスターは、作品と観客をつなぐ、いわば最初のワンシーンのような存在。映画文化の背景にある多彩なデザイン表現を、ぜひ BILLY' S ENT SHIBUYA でお楽しみください。