映画やドラマなどで、気になる存在として注目を集める俳優・中島歩。
映画や音楽、ファッションへの愛や好奇心が強いという一面を持つ中島に、
自身を形作ってきたカルチャーについて自由気ままに語ってもらう本連載。
第五回目は、大学時代に参加していた落語研究会での思い出や今に通じる芝居の楽しさについて。
大学では先輩から漫才サークルみたいなものだと言われて、落研(落語研究会)に入りました。高校生のときから友人たちとコントをやったりしていたし、当時は「タイガー&ドラゴン」というドラマの影響もあって楽しそうだなと思ったのですが、実際に入ってみるとみんな落語にガチで、覚える量が多いし、とにかく怖い。教室の黒板の前に机を置いて、その上に座布団を敷いて先輩たちが怖い顔で見ている前でひたすら練習。一通り終わったら怒られるみたいな毎日で、内心「騙された!」と思いました。
一番最初に覚えたのは「道具屋」という小噺。落語の基礎のようなネタで、つまらない話だなぁなんて思いながら練習がてらいろんな噺家さんの音源を聞いていたのですが、桂枝雀の「道具屋」は飛び抜けて面白かった。昔の音源なのにすごくモダンに感じたし、当時からこういう笑いがあったのかと衝撃を受けたことを覚えています。
当時の感覚は今の芝居にも通じています。落語は自分一人でその空間をコントロールしないといけなくて、お客さんの前で披露していくうちにだんだんと「今これを言えばウケる」とか、「今日はもうだめだ」といった反応がオチの少し前から想像できるようになってくるんです。気持ちのいい話し方やお客さんに伝わる動作など、細かな技術も含めて芸の面白さの入り口のようなものを垣間見ることができた気がします。
あとは、役のテンションの幅が広がるきっかけにもなったかな。落語に出てくるキャラクターって、そそっかしい江戸っ子がモチーフになっていることが多いんです。だから、恥ずかしいキャラクターや癖のある役をやるのもへっちゃら。変なプライドを感じずに役作りを純粋に楽しむことができるのも落語と出会ったおかげかなと改めて思います。
1988年10月7日生まれ、宮城県出身。2013年に美輪明宏主演舞台「黒蜥蜴」で俳優デビュー。NHK朝ドラ「花子とアン」(2014)、「あんぱん」(2025)、映画『いとみち』(2021)、『偶然と想像』(2021)などに出演。2026年にはテレビ東京「俺たちバッドバーバーズ」で初主演、NHK大河『豊臣兄弟!』にも出演中。