映画やドラマなどで、気になる存在として注目を集める俳優・中島歩。映画や音楽、
ファッションへの愛や好奇心が強いという一面を持つ中島に、
自身を形作ってきたカルチャーについて自由気ままに語ってもらう本連載。
第九回目は、日常的な移動から得られる愉しみと忘れられない旅の原体験について。
車を買ったばかりの頃は、知らない街によくドライブしにいきました。埼玉の飯能とか、多摩市の方とか。都心から少し離れると景色も違って、かなり気分転換になります。仕事の日は自分で運転して現場にいくこともあって、プライベートだったら絶対に行かないような地域に行けることが新鮮で結構楽しいんですよね。
ドラマや映画の撮影では、地域の方のご自宅をお借りして身支度をすることもあります。知らない人が普段生活している空間で、知らない人のご先祖さんの写真とかを眺めながら、「なんだこの状況は」なんて思ったりして。でも、そういう普通に暮らしていると信じられないようなことが起こることもこの仕事が好きな理由のひとつかも
忘れられない旅は、仕事で行ったカナダかな。オーロラが観測できることで有名なイエローナイフから、さらに離れた小さな村に二週間ほど滞在したのですが、そこで見た数々の景色は衝撃的でした。イエローナイフとその村の間は湿地帯になっていて、基本的には空路しかないんです。そこが、湿地が凍る冬だけは道路になっていると聞いて見に行ったのですが、その光景が素晴らしかった。周りは何もない、ただただ地平線が広がる風景を前にダイヤモンドダストがきらきら煌めいている。もう言葉が出ないとはこのことだな、と体感しました。
滞在中はオーロラも何度か見ることができたし、これまでの人生で見たことがないく
しれません。多分、僕は会社とか毎日同じ場所に通って、同じ人たちと顔を合わせるようなサイクルが苦手なんです。だから、こうやっていろんな場所にいくことのできる仕事は合っているんだなと、改めて実感しています。
らいの星の数に毎晩圧倒されていました。想像すらしたことのないようなエキゾチックな光景の連続は今も記憶に焼きついています。あとは、現地の人々のカルチャーも面白かったな。先住民の方たちが暮らす村に滞在していたのですが、みんなで大きな鹿を捕まえて食べたりして。日本では絶対に経験することのできない、あの村で過ごした日々は一生忘れないと思います。
1988年10月7日生まれ、宮城県出身。2013年に美輪明宏主演舞台「黒蜥蜴」で俳優デビュー。NHK朝ドラ「花子とアン」(2014)、「あんぱん」(2025)、映画『いとみち』(2021)、『偶然と想像』(2021)などに出演。2026年にはテレビ東京「俺たちバッドバーバーズ」で初主演、NHK大河『豊臣兄弟!』にも出演。